介護の世界では、一般企業のように生産性だけで業務の質を測ることはできません。
どのような介護をするのか、その質は常に問われるものです。
近年では、自身の両親の介護に携わった経験を活かすため、定年後の新たな働き口を見つけるため、など様々な理由で一般企業から介護業界に参入する人が増えてきています。そうした人たちが実際に仕事に就いてみて、まず戸惑うのが介護現場の常識を知らないという点ではないでしょうか。
特によくあるのが、スピードや効率重視の問題です。
同じ排泄介助を、あるスタッフは10分かからずにでき、別のスタッフは15分かかる場合があったとしても、前者のほうが優れているとは限りません。確かにスピードが早いのは素晴らしいことですが、それよりも、素早い介助作業の方がが利用者にとって安心できるものであったかという点が一番の見るべき部分なのです。
急かされ、追い立てられるようにサービスを受けた利用者は、落ち着きのなさを感じていたかもしれません。
一方、時間がかかった方は、相手の体力や安全性、さらに気持ちのことまで考えて、丁寧な排泄介助を行っていたかもしれません。利用者の観点からいうと、介助ケアを受けたいのは当然後者の方でしょう。少々時間がかかったとしても、利用者の気持ちを考慮することが一番大事なのです。
もちろん、介護業界はどこも人手不足であり、利用者に必要以上の時間を費やすことはできません。優しさと効率のバランスを常に意識することが重要なのです。そうした心がけが、介護のレベルの高さにつながっていくでしょう。